写真のボケに興味を持った時期があった。ボケのある写真を撮るにはセンサーの大きなカメラで、絞りを大きく開き（F値を小さくする）、望遠レンズ等の焦点距離の長いレンズを用い、被写体に接近して、被写体を背景から遠ざけて撮影すればよい……。お花畑に迷い込んだ僕は、たくさんのオレンジ色のコスモスの花に囲まれていた。目の前の花に近寄りレンズを向けながら、この花達を上手くボケさして撮りたいと思った。いろいろ条件を変えて撮って、一番気に入ったのがこの写真である。周りに散らばった花が、ふんわりと柔らかくて暖かい。僕がウイリアム・ターナーの霧がかかったような風景画にひかれるのも同じ理由からだと思う。周りの花々に光が拡散し、様々な色が溶け合っている。境界のはっきりしない、あいまいな空気に包まれて居心地のよさを感じた。

(宮原 秀仁)