秋燦燦
長野県の最南端の根羽村にある、知る人ぞしる有名な柿の木である。高校時代この村出身の友人の家に遊びに行ったことがある。山深い村で林業が主な産業であった。この村独特の五平餅をご馳走になり、翌日は彼の父親の運転する車に乗って愛知県まで材木を運搬するのを手伝ったことがある。その時は「柿は喰うもの」と思っていたのでこの見事な柿の木を愛でる余裕も無かった。
たわわに実をつけた老木を眺めながら彼のことを考えていた。彼は優秀な男で、ある電力会社の相当な地位で定年を迎えた筈だがその後音沙汰が無いので心配していた。実はそのこともあり一度行ってみようと思って遠くの根羽まで撮影に来ることになったのである。
(塩原 治男)