診療ノート

#28 抗血栓薬服用者に関する消化器内視鏡検査

現在、一般診療や人間ドックなど様々なところで胃カメラ(上部消化管内視鏡検査)や大腸カメラ(下部消化管内視鏡検査)がやられるようになりました。また医療の進化に伴って脳梗塞や心筋梗塞などで抗血栓薬、いわゆる血が止まらなくなる薬を内服されている方々を多く見かけるようになりました。そのような方々は今まで内視鏡検査をするときに薬を中止して行っていました。ただ最近になり検査時のガイドラインがでましたのでお話しさせて頂きます。
まず消化器内視鏡といっても様々な方法があり、それぞれ危険度が違います。

出血危険度による消化器内視鏡の分類
1 .通常消化器内視鏡
上部消化管内視鏡(経鼻内視鏡を含む)
下部消化管内視鏡
超音波内視鏡
カプセル内視鏡
内視鏡的逆行性膵胆管造影
2 .内視鏡的粘膜生検(超音波内視鏡下穿刺吸引術を除く)
3 .出血低危険度の消化器内視鏡
バルーン内視鏡
マーキング(クリップ,高周波,点墨,など)
消化管,膵管,胆管ステント留置法(事前の切開手技を伴わない)
内視鏡的乳頭バルーン拡張術
4 .出血高危険度の消化器内視鏡
ポリペクトミー(ポリープ切除術)
内視鏡的粘膜切除術
内視鏡的粘膜下層剝離術
内視鏡的乳頭括約筋切開術
内視鏡的十二指腸乳頭切除術
超音波内視鏡下穿刺吸引術
経皮内視鏡的胃瘻造設術
内視鏡的食道・胃静脈瘤治療
内視鏡的消化管拡張術
内視鏡的粘膜焼灼術
その他

また薬剤も主に抗血小板薬(アスピリン、チエノピリジン誘導体など)、抗凝固薬(ワーファリン、ヘパリンなど)にわけられており、その中にも様々な種類があり、種類によって効果時間が異なります。
今回のガイドラインでは検査や処置によって血が止まらなくなること、止めて元の病気が再発、悪化してしまうことが考えられております。このため通常消化器内視鏡や内視鏡生検、出血低危険度の消化器内視鏡では抗血栓薬1剤では休薬をせず施行しても良いとし、2剤以上に関しては状況に応じて慎重に対応をするようにされています。また出血高危険度の消化器内視鏡では休薬や他の薬剤への置換を考慮されています。もちろん生検などを行う際には止血を確認し、止まらない場合には止血術をすることとなっております。
今までは通常検査だけで休薬をすることがありましたが今後は休薬をせず検査をしてもらい、癌などの治療が必要な場合は休薬、置換をしていくようになると思います。
また今までに休薬をしてきている患者さんもいると思います。今まで休薬していたのに休薬しなくても良いのか?また「以前はやめたから今回もやめてよい」と自己判断で休薬をしてします方もいると思いますが出血のリスク以上に再発のリスクが重篤であることをお話頂ければと考えます。