診療ノート

#56 最近の自己血糖測定器 CGM

糖尿病の治療を行う上で、血糖の動きを知ることはとても重要です。
これまでは、指先を穿刺することにより自己血糖測定を行うことが多かったですが、血糖変動が大きく頻回の血糖測定が必要な患者さんには負担が大きい側面もありました。

近年、毎回の穿刺を行わずに、血糖センサーを装着することで持続的な血糖推移を見ることができるようになってきています。今回は持続血糖モニタリング(CGM)について紹介します。

持続血糖モニタリング (Continuous Glucose Monitoring:CGM)とは

持続血糖モニタリング(以下CGM)は24時間の血糖推移を見ることのできるデバイスです。日本国内においてもインスリン使用患者の糖尿病治療において使用される機会が増えてきています。 特に、インスリン注射が必要で、血糖変動が大きく低血糖リスクが高い患者さんの糖尿病治療を行う上で有益と考えられます。CGMの中では、FreeStyleリブレ®️が代表的な商品になります。

CGMの仕組みですが,10円玉程度の機械を上腕や腹部(機種により異なる)を貼ることで,皮膚の下の組織液(間質液)中のグルコースを一定間隔で自動測定します。あくまで、皮下組織液中のグルコース値であり血糖値とは異なることには注意が必要です。特に血糖変動が大きいタイミングには実際の血糖値とCGMでみることのできるグルコース値に乖離を起こすことがあり、その際には今まで通り指先を穿刺して行う血糖測定も必要となります。

↑上腕にFreeStyleリブレセンサーを装着している

CGMを使用することで,これまでの指先で穿刺を行い血糖測定する場合には、「点」でしか見ることができなかった血糖推移を24時間に渡る「線」での変化を見ることが可能となりました。

CGMにおける指標・治療目標

CGMを使うことで新たな治療目標が提案されました。(「CGMの管理目標に関する国際コンセンサス」Diabetes Care 2019;42:1593–1603) その中では,血糖70 – 180mg/dLを治療域(in range)として,治療域に含まれる割合をTIR(time in range)と定義し,血糖コントロールの指標としています。 また,治療域より高い割合をTAR(time above range),治療域より低い割合をTBR(time below range)としています。

通常の糖尿病患者さんでは,1型・2型にかかわらず,TIRが1日の測定の70%を超えていることが望ましいとされました.高齢者や合併症が進行した患者さんでは,もう少し目標範囲内の割合は少なくTIRが1日の50%を超えればよいとしました.TIR 70%が、ほぼHbA1c 7.0%に相当するとされています。

さらに,血糖変動を解析する際にはRoger Mazzeらが開発した血糖変動の解析ツールであるAGP(Ambulatory Glucose Profile)を使用することが望ましいとされました。

AGPは,中央値曲線,75-25パーセンタイル曲線,10-90パーセンタイル曲線などからなり,低血糖や高血糖となる可能性の高い時間帯や,血糖変動が大きい時間帯を視覚的に知ることが可能です。

CGM使用の適応となる患者さん

2022年4月からは、1型・2型の病型を問わずインスリン療法を行うすべての糖尿病患者さんが、保険適応でFreeStyleリブレ®️を使用することが可能になりました。 その中でも、

  1. インスリン重宝でも血糖変動が大きい患者さん
  2. 生活が不規則で血糖が不安定な患者さん
  3. スポーツや肉体作業など活動量が多く血糖が動揺しやすい患者さん
  4. 低血糖対策の必要度が高い患者さん

がCGMの継続使用が考慮される患者像として挙げられます。(一般社団法人日本糖尿病学会 持続グルコースモニタリングデバイス適正使用指針)

インスリンを使用している患者さんで、血糖変動が大きい場合に主治医とFreeStyleリブレ®️などのCGM使用について、相談していただくと良いと思います。